研究概要 |
モレキュラーインプリンティング法による分子認識能を有する不均一系触媒の開発を行うことを目的とした。本研究代表者が所属する理学系研究科化学専攻化学反応学研究室のモレキュラーインプリンティング研究成果を基礎として、戦略的には同様の考えを取りつつ、さらに発展させて分子認識を有する不均一系触媒を開発することを目的とした。 シリカやアルミナ担体表面にまずP(CH_2OH)_3を固定化し、そのリンにRh_2(CO)_4Cl_2を配位させ、固定化Rh触媒を調製することを試みた。しかし、この方法ではRhを均一に固定化することは出来ないことが分かった。むしろ、担体表面に直接反応して固定化される少量のRh種の方が高い触媒活性を持つことが分かった。そのため、当初の計画を変更し,Ru錯体を前駆体とするモレキュラーインプリンティング触媒の調製を試みたが成功しなかった。 一方、酸塩基性触媒作用を示すモレキュラーインプリンティング触媒の調製を行った。エステル加水分解反応の遷移状態として推定されている4配位構造モデル化合物として、中心炭素をリンに変えたテンプレート分子を選び、テンプレート分子をA1203表面に吸着した後、シリカマトリックスを形成させ、加温してテンプレートを除去してテンプレートと同形のキャビティを得た。このモレキュラーインプリンティング触媒は、テンプレート分子のサイズより大きなエステル分子に対しては加水分解が遅く、テンプレート分子サイズと同じサイズのエステルを境に、それより小さなエステルの加水分解を促進することを見出した。
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