動物細胞培養過程で遭遇するダイナミックプロセスは、培養面への接着プロセス、培養面での増殖プロセス、培養面からの剥離プロセス、と考えられる。培養面での接着プロセスでは、培養初期段階における動物細胞の培養面への効率的接着方法を、培養面での増殖プロセスでは、動物細胞が培養面で増殖しうる剪断応力値を、培養面からの剥離プロセスでは、増殖した動物細胞が剥離してしまう剪断応力値を、それぞれ実験的に明らかにして、動物細胞用バイオリアクターの設計指針となりうる基礎データを収集することが本研究課題の目的である。 平成14年度は、前年度作製した剪断応力負荷装置を使用して明らかになった接着プロセス後の増殖プロセスと剥離プロセスをそれぞれ解析して研究の総括を行った。 1 接着した細胞のその後の増殖動態を顕微鏡画像処理システム(申請備品)に記録し、細胞の増殖形態と増殖速度を測定した。増殖速度は、単位面積当たりの細胞密度に依存し、密度の高い方が増殖は良好であった。これは、周囲の細胞に依る協力現象と捉えられる。 2 細胞が培養面から剥離する剪断応力値を明らかにした。数Pa程度で細胞は剥離した。 3 剪断応力負荷装置により、細胞の増殖中に剪断応力を負荷して、増殖速度の剪断応力依存性を実験的に明らかにした。剪断応力が大きすぎると細胞は剥離するが、増殖も剥離もせず細胞数が一定に保たれる適度な剪断応力値の存在を新たに見出した。 4 2年間で得たデータを整理して、細胞の活性を維持したまま動物細胞をバイオリアクター内に高密度培養できる形式を提案した。
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