蛍光エネルギー転移によるクエンチングを利用した、cAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)の活性をイメージングするためのペプチドの設計を行った。本センサーペプチドは、リン酸化されることによって親水性が高くなり、立体構造変化を起こし、蛍光強度が変化すると考えられる。具体的には、Kemptide配列(LRRASLG)を含む種々のペプチドを用いて、このペプチドのC末端に蛍光ドナーとして、EDANSを、N末端にクエンチャーとして、dabcylを修飾したペプチドを合成した。 合成によって得られた非リン酸化及びリン酸化センサーペプチドの蛍光スペクトルを測定した結果、リン酸化センサーペプチドの蛍光強度は、非リン酸化ペプチドより大きく、顕著な差が見られた。これは、センサーペプチドがリン酸化されることによって、親水性が高くなり、ペプチドが伸びたような構造をとるために、蛍光色素間の距離が離れ、エネルギー転移が起こりにくくなったためであると考えられる。一方、塩基性アミノ酸を伸長させたペプチドでは、反対にリン酸化により蛍光強度が小さくなった。これはリン酸化により、電荷が中和され、それゆえ縮んだ構造になるためであると考えられる。また、PKA反応後のセンサーペプチドのHPLCの溶出時間は、合成によって得られたリン酸化センサーペプチドの溶出時間と一致し、本センサーペプチドは、PKAによってリン酸化されることが確認された。
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