研究概要 |
今年度に行った研究によって得られた知見は、以下の通りである。 1,円筒ガラス内に設置した水平回転軸を磁気カップリングにて駆動し、回転円板をステンレスメッシュとした回転円板型培養機を試作し、酵素ペルオキシダーゼを産生する担子菌Coprinus cinereus IFO 30628の培養を行った。培養温度、pH、回転速度、通気量などの培養条件を最適化した結果、およそ50U/mlのペルオキシダーゼを生産することができた。また、7回の反復回分培養にも成功し、大量に酵素を生産する目途がついた。この回転円板型培養機は、通常の振とうフラスコ培養によって生産する酵素活性の1.5倍もの値を得ることができ、2倍の生産速度を上げることができた。なお、最適な培養温度、pHは、それぞれ35℃、7であり、回転速度は、20rpm、通気量は0.5vvmであった。 2,上記で得られた粗酵素液を用い、フェノールおよび内分泌撹乱化学物質であるビスフェノールAの重合沈殿処理を行った。100ppmの濃度からなるフェノールあるいはビスフェノールA溶液に酵素1.5U/ml、過酸化水素1.1mMを添加したところフェノールは5分以内に、ビスフェノールAは30分以内に完全に重合し、不溶性の沈殿となった。この沈殿物を濾過によって除去すれば、処理が完了する。ここで、重合沈殿したポリフェノールの重量平均分子量をGPCにて測定したところ、フェノールの場合で7400、ビスフェノールAの場合には6300となった。これらのポリフェノールが新規材料として利用できるか否かは今後の課題である。なお、これらのフェノール類の除去するのに最適なpHは、いずれの場合も9であったが、酵素量を少し増やせばpH=7でも十分に対応することができた。また、温度の除去率に及ぼす影響は比較的少なかった。
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