顕微鏡の標本台の上で実験ができるフロースルーチャンバーの製作を完成し、チャンバーの上で胞子を発芽させ、一定時間間隔でデータをとり、画像解析装置により解析ができるようになった。これによって、発芽してからの菌糸の伸張速度、枝分かれ頻度、先端数の変化などのデータをオンラインでコンピューターに収集することができた。 本研究によってM.alpinaの培養における菌糸形態を直接調べるために、さまざまな栄養源濃度、C/N比条件を変化させた。(1)菌糸伸長速度、先端伸長速度はともに炭素濃度が10g/L以下では最大を保ち、C/N比には依存していなかった。また、分岐形成速度は炭素濃度が1g/L以上、炭素枯渇でなければ一定であった。さらに菌糸伸長速度と先端形成速度は、C/N比、栄養源濃度に関わらず直線的な関係を示した。分岐形成速度は、先端伸長速度と菌糸伸長速度がそれぞれ臨界値以内であるならばそれぞれの速度に依存せず一定であったが、臨界値以上になると減少した。臨界値付近で菌糸内において代謝の変化が起こっているのではないかと考えられる。(2)菌糸形態形成におけるアミノ酸組成の影響を調べた。グルタミン酸あるいはアルギニンの影響が大きく、特に菌糸の伸長にはアリギニンが、菌糸の先端形成にはグルタミン酸がそれぞれ深く関与していることが確認できた。(3)ミクロ的な形態とペレット形成についての比較も行った場合、菌糸伸長速度、先端形成速度がともに高いとき、ペレット形態からしだいにパルプ状の小さなペレットが形成されるという傾向が見られた。対照的に、菌糸伸長速度と先端形成速度が低いときは、小さなフィラメント状の形態から大きなペレットが形成された。本研究によって、ミクロ的な形態を知ることにより、マクロ的な形態の予測が可能となり、今後これにより実際の培養中菌糸形態の最適化を行うことも可能となった。
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