研究概要 |
石油中の難除去性含硫化合物ジベンゾチオフェン(DBT)は、石油の燃焼の際に亜硫酸ガスを生成し大気中に放出されて酸性雨の原因物質となることから地球環境問題のターゲット物質の一つとして近年特に注目を集めている.われわれは高効率脱硫プロセスの構築を目標にしてまず今までの広範な研究でDBT代謝系を明らかにした。この代謝系において我々はフラビンレダクターゼ(DszC、Aとカップリングする酵素)がDBT脱硫代謝を支配する酵素であることを明らかにしている。そこで本年度は、DBT脱硫系酵素系の酵素の中で特にフラビンレダクターゼの精製と酵素科学的性質を明らかにし以下の知見を得た。 常温性DBT脱硫細菌Rhodococcus erythropolis D-1と好熱性DBT非脱硫細菌Bacillus sp. DSM411からフラビンレダクターゼの精製を行い、両者の酵素科学的性質を明らかにした。その結果、DSM411株由来のフラビンレダクターゼはD-1株のものと比較した結果、至適温度が高く(70℃)、熱および広範囲にわたるpHで安定であることを明らかにした。また基質であるNADH, FMNに対する親和性の高さについても優位性を示したしさらに、D-1株およびDSM411株のフラビンレダクターゼ遺伝子のクローニングと発現を行った。これによりDBT脱硫に関与する酵素でフラビンレダクターゼとカップルするモノオキシゲナーゼとの反応効率の最適化についての検討が可能になった。
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