研究概要 |
石油中の難除去性含硫化合物ジベンゾチオフェン(DBT)は、石油の燃焼の際に亜硫酸ガスを生成し大気中に放出されて酸性雨の原因物質となることから地球環境問題のターゲット物質の一つとして近年特に注目を集めている.本研究では高効率脱硫プロセスの構築を目標に、DszBとフラビンレダクターゼに重点をおき脱硫代謝全酵素系の特性解明と酵素活性・安定性向上のための機能向上・改変を目的として以下の結果を得た。 (1)DBT脱硫菌由来のフラビンレダクターゼの特性解明 DBT脱硫酵素系のモノオキシゲナーゼ活性に必須のフラビンレダクターゼをRhodococcu erythropolis D-1から均一に精製し、諸性質を明らかにするとともにその遺伝子を大腸菌に組込み酵素を大量発現させた。本酵素はフラビンを含有せず、NADHに対する特異性が高かった。また80℃,30分間の熱処理後も30%活性を保持していた。 (2)DBT非脱硫細菌由来のフラビンレダクターゼの特性解明 DBT脱硫酵素系のモノオキシゲナーゼ活性に必須のフラビンレダクターゼをDBT非脱硫細菌Paenibacillus polymyxa A-1株から精製した。 (3)DszBの大量発現と酵素の特性解明 Rhodococcus erythropolis D-1におけるDBT脱硫代謝系の最終段階を触媒するDszB酵素遺伝子をシャペロニン遺伝子groEL/ESとともに大腸菌に導入して酵素を大量発現した。組換えDszB酵素は至適温度35℃,基質HBPSiに対するKm値、k_<cat>値はそれぞれ8.2μMおよび0.123s^<-1>であった。DszBはまた反応生成物2-HBPによって阻害を受けた(Ki=0.25mM)。しかしもう一つの反応生成物亜硫酸イオンには阻害されなかった。基質特異性は非常に高くHBPSi以外ではフェニルベンゼンスルフィン酸にのみ活性があった。以上のことから本酵素は新規酵素と考えられ、HBPSiデスルフィナーゼと命名した。
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