ATP(アデノシン三リン酸)は、全ての動物、植物、微生物などの生命体に存在する物質である。我々はポリリン酸による生命エネルギー再生系を使って、試験管の中で微量のATPを増幅させる反応を開発した。最初にアデノシン-リン酸(AMP)とアデニル酸キナーゼ、ポリリン酸キナーゼを混合しておく。その状態ではATPができないが、反応系に少量のATPが混入すると、即座にアデニル酸キナーゼによって、二分子のアデノシン二リン酸(ADP)が生じる。できたADPはポリリン酸とポリリン酸キナーゼによって、二分子のATPに変換される。この反応が繰り返されて、多量のATPが数分のうちに作られる。ATPは生きた細胞に多く含まれることから、その測定は目に見えない微生物の検出法の一つとなっており、広く利用されている。ATPの測定方法としては、ホタル由来ルシフェラーゼとルシフェリンを用いて簡便に光として計測できる。すなわちルシフェラーゼはルシフェリンをATPのエネルギーを使って酸化し、光子を発生させる酵素であるので、十分なルシフェリンが存在する条件で発生する光量はATP量に依存する。しかし、測定するATP一分子に付き一個の光子の発生にしか寄与しないことから、かなり測定感度の高いルミノメータを必要とする。この連鎖的ATP増幅反応は微量のATPを増幅し、従来よりも非常に強い光として検出でき、生物発光の感度を1000倍以上上げることを可能にした。
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