現在、ATPの検出にはホタルルシフェラーゼによる生物発光を利用した検出が広く用いられている。ATPは微生物にも含まれているために、ATPの検出は目に見えない微量の微生物の衛生検査にも使われている。しかし10^<-12>M以下の濃度のATPに対しては発光量が小さく、検出が難しい。そこで、本研究ではポリリン酸キナーゼ(PPK)とアデニル酸キナーゼ(ADK)の融合酵素PPK-ADKを用いた連鎖的ATP増幅反応により、微量のATPを増幅させ、検出する実験をおこなった。最初にアデノシン一リン酸(AMP)とポリリン酸、PPK-ADKを混合しておく。その状態ではATPができないが、反応系に少量のATPが混入すると、即座にアデニル酸キナーゼによって、二分子のアデノシン二リン酸(ADP)が生じる。できたADPはポリリン酸とポリリン酸キナーゼによって、二分子のATPに変換される。この反応が繰り返されて、多量のATPが数分のうちに作られる。実験の工夫した点としては、試料由来のATP以外に反応系に混入するATPやADPを予め除いておくことである。その一つとして酵素に結合しているATPやADPをアピラーゼを用いて予め除いた。また、AMPに混入しているADPを高速液体クロマトグラフィーによって除いた。その結果、この連鎖的ATP増幅反応は微量のATPを増幅し、従来よりも非常に強い光として検出でき、生物発光の感度を1000倍以上上げることを可能にした。
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