研究課題/領域番号 |
13650859
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
桐村 光太郎 早稲田大学, 理工学部, 教授 (90195412)
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研究分担者 |
宇佐美 昭次 早稲田大学, 理工学部, 教授 (50063508)
木野 邦器 早稲田大学, 理工学部, 教授 (60318764)
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キーワード | biodesulfurization / Bacillus subtilis / bioconversion / dibenzothiophene / diesel oil / Mycobacterium phlei / naphthothiophene / petroleum |
研究概要 |
現在の石油精製工程では水素化脱硫(HDS)が行なわれているが、有機硫黄化合物が完全に除去されているわけではなく、とくに軽油中にはジベンゾチオフェン(DBT)類およびそのアルキル誘導体が多く含まれている。これらの燃焼により発生する硫黄酸化物は大気汚染や酸性雨の原因物質となるため、環境保全の観点からHDSを補完する新規技術としてバイオテクノロジーを利用した脱硫技術の開発に期待が寄せられている。本研究では、軽油の脱硫に適した中等度好熱性細菌を探索し、その脱硫機構について検討した。50℃でDBTを唯一の硫黄源とした微生物探索により、2株の異なる属の脱硫細菌としてBacillus subtilis WU-S2BおよびMycobacterium phlei WU-F1を取得した。両株とも4,6-ジメチルDBTをはじめとするアルキルDBTに対する分解性も有しており、これが硫黄原子を特異的に酸化して亜硫酸イオンとして遊離する分解代謝機構によることを明らかにした。増殖菌体のみならず、あらかじめ培養した休止菌体を生体触媒として利用した分解も可能であり、0.81mM DBTを90分で完全に分解した。30〜50℃の幅広い温度範囲でDBTの分解が可能であり、常温性の脱硫細菌に比較して優位性が明らかになった。なお、M. phlei WU-F1についてはナフトチオフェンや2-エチルナフトチオフェンも分解するため、多種の有機硫黄化合物を含む軽油の実用的な脱硫にも対応しうるものと考えられる。現在の日本における軽油中の硫黄分に関する規制値は500ppm未満で、市販の軽油中には150〜350ppmの硫黄分が含まれている。しかし、2004年末には50ppm未満に規制強化されることが決定しており、2006年頃には欧米を含めて15ppm未満への移行が予定されている。したがって、今後の研究ではこれらの規制値を数値目標とした軽油のバイオ脱硫技術の確立を目的として、上記2株を遺伝子資源として活用し高機能脱硫細菌を創製する。
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