研究概要 |
平成13年度はマンガン錯体の合成ならびにクロロフィル誘導体の自己集合体形成について検討し、以下に示す成果を得た。 1.高原子価マンガン錯体の合成:種々の三座シッフ塩基配位子とKMnO_4との反応で構造の異なる4種の高原子価マンガン錯体が生成することを明らかにし、その反応機構を示した。次に、5-スルホサリチルアルデヒドとエチレンジアミンまたはプロピレンジアミンとの反応から四座シッフ塩基配位子(H_2L)を、また、長鎖アルキルモノアミン(RNH_2:R=Oct, Decyl, Dod)との反応から二座シッフ塩基配位子(HL')を合成し、マンガン塩との反応により、両親媒性錯体、Mn^<III>(L)ClおよびMn^<III> (L')_2Clを得た。Mn^<III> (L)Clはカルシウムイオンとイオン対を形成して集積化する。また、Mn^<III> (L')_2Cl錯体は、MeOHに可溶であり、このMeOH溶液に少量の水を添加すると集積化することを確認した。さらに、集積化したマンガン錯体は、H_2O_2の分解を顕著に促進することことがわかった。一方、これらマンガン(III)錯体を塩素(Cl_2)酸化することにより、ジクロロマンガン(IV)錯体、Mn^<IV>(L)Cl_2およびMn^<IV>(L')_2Cl_2を生成することを確認した。これらマンガン(IV)錯体は水に対して非常に鋭敏に反応することから、水を酸化して酸素を発生すると期待される。現在、単離方法を検討中である。 2.クロロフィル集合体:緑色光合成細菌の主たる集光器官であるクロロゾームにおいては、バクテリオクロロフィル-c分子が自己集合体を形成し、優れたエネルギー移動媒体として機能している。本研究では、このモデルとなる亜鉛クロリンに種々の親水性の置換基を有機化学的に導入し、これらの自己集合体形成について検討した。その結果これら両親媒性亜鉛クロリン分子の集合体の形態を界面活性剤の添加により制御できることが確認された。平成14年度は、クロロフィル集合体と上記両親媒性マンガン錯体を界面活性剤の脂質膜内に取り込み、光合成の光化学系IIの模擬システムを構築し、マンガン錯体による水(H_2^<18>O)の酸化で発生する酸素(^<18>O_2)をGC-MSで測定する予定である。
|