非蛋白質化合物では実現できない高機能分子の創出に向けて、天然蛋白質のアミノ酸配列に依存しない人工蛋白質設計と実験室進化の研究を行った。本年度は、人工ヘム蛋白質のin vitro selection systemとして、ファージを用いた人工蛋白質遺伝子のパッケージングとファージの外被表面上への発現蚕白質の提示を試みるとともに化学修飾ヘムを用いた活性クローンの選択系を作製した。具体的には、前年度までに設計されている人工グロビンをM13ファージの外殻蛋白質との融合蛋白質としてコードしているDNAを合成し、外被上に人工グロビンを発現しているファージを作製した。さらに、ヘム(プロトポルフィリンIX)に対する親和性を指標としてランダム変異を導入した人工蛋白質を選択するために、ヘムのプロピオン酸基をビオチン化し、ビオチンとストレプトアビジンの高い親和性を利用して、ビオチン化ヘムをストレプトアビジンでコートされた固相表面上に固定した。また、人工蛋白質に天然様の構造特性を与えるための理論的アプローチとして、蛋白質立体構造中のアミノ酸側鎖コンフォメーションと残基間接触の統計的解析を行い、構造特異性の指標となる新しい関数(ΔS^<contact>)を作製した。この関数は、これまでに報告されている天然および人工蛋白質の変性実験から得られたフォールディングの共同性(m値)と高い相関を示した。これを用いて人工グロビンの再設計・再合成を行ったところ、NMRによって検出される構造特異性が改善された。
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