研究概要 |
平成13年度は,キャピラリー電気泳動〈CE〉システムを反応速度論解析に用いる,Capillary Electrophoretic Reactor(CER)の確立と,金属錯体のCEにおける速度論的な挙動解明の2点について,重点的に研究を行った. 1.四座配位子,ホルマザン化合物をCE系に応用し,多金属イオンの同時検出法を開発した.特に,反応活性で,いままで検出された例のほとんどない,銅および亜鉛イオンの高感度検出に成功している(絶対書検出限界:Cu0.178pg;Zn0.752pg). 2.CERを用いて上述のホルマザン錯体の解離反応速度を測定し,配位水の交換速度定数〜2x10^7S^<-1>,から判断して極めて速度曹的に活性であると考えられてきた亜鉛イオンが,そのホルマザン錯体においては,解離速度定数が2.4x10^<-5>s^<-1>(pH6.91)と極めて小さく,亜鉛錯体が互換反応不活性であることを明らかにした. (以上は分析化学会第50年会,2001年11月23〜25日,熊本にて発表) 3.ランタノイド-ポリアミノカルボン酸錯体の速度論的な安定性発現の因子を明らかにすることを目的に,芳香環を有し比改的剛直な配位子骨格を持つと予想される,1,2-フェニレンジアミン-N,N,N,N-四酢酸(PhDTA)のCe(III),Gd(III),およびYb(III)錯体についてそれらの解離反応速度を測定した、その結果,Ce-PhDTA錯体の解離反応速度定数はわずか2.1x10^<-3>s^<-1>であること,またその速度定数の温度依存性から活性化パラメータを決定し,特に,活性化エントロピー(ΔS^*)が-298Jmol^<-1>K^<-1>にも達する大きな負値を示すことを明らかにした.この結果は,中心金属イオンの特性のみに依拠して置換反応が速いと信じられてきた,ランタノイド錯体の反応論の常識を覆す成果である.
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