研究概要 |
本研究は,考案・作製した反射測定装置を用いて酸型ポルフィリンの液液界面吸着状態を解析し,この方法を実用的なin situ測定法として確立することにより,「液液界面ナノ領域の化学」に関連する研究・開発に資することを目的としている.昨平成13年度はテトラフェニルポルフィリン(H_2TPP)がドデカン-無機酸水溶液界面に酸型会合体(H_4TPP^<2+>)_nとして吸着した状態をプリズム-セル装置を用いて解析した.その結果,反射吸光度-界面濃度曲線から単層-多層吸着状態を識別する方法を見出し,H_4TPP^<2+>分子の飽和界面濃度C^S_i=1.2×10^<-10>molcm^<-2>,又その界面法線からの配向角φ=47°を得ている.さらに,部分反射スペクトルの入射角依存性を検討した結果,外部反射(ER)のみならず部分内部反射(PIR)スペクトルでも正と負のバンドをもつスペクトルを新たに観測している. 平成14年度は1)H_2TPPの他に親油性H_2TPP誘導体数種を取り上げて,ドデカン-無機酸水溶液界面への吸着の有無とそれに対するポルフィリンの構造的要因を実験的に検討した.その結果,メソフェニルグループの2,6-位をメチル置換やハロゲン置換した誘導体では溶質が有機相に溶存したままであり,界面吸着を示すスペクトルは観測されなかった.これは2,6-位置換フェニルグループの回転立体障害により界面吸着しにくくなることを示唆する. 2)テトラ-p-トルイルポルフィリン(H_2TTP)は,H_2TPP同様,酸型会合体として界面吸着することが分った,この系では2種会合体の共吸着を示唆するATR-界面濃度曲線を示し,C^S_i=1.0×10^<-10> molcm^<-2>,又平均配向角φ=48°を得た. 3)入射角可変装置をCCDアレイ分光光度計に接続し,共吸着した(H_4TTP^<2+>)_nのp-偏光PIR及びERスペクトルを測定した結果,(H_4TTP^<2+>)_nの場合同様,正と負のバンドがERとPIRで同じ波長位置に逆符号で観測された.466及び477nmの近接バンドは同符号であり,界面に平行な電子遷移モーメントを持つ同種の発色団に帰属することから,同タイプの会合体が共吸着していると推察される. 4)その他,プリズム-セル法によりドデカン-2M硝酸系におけるH_2TPPの酸型会合吸着を再検討した結果,C^S_i=1.8×10^<-10>molcm^<-2>,φ=29°を得た. 5)上記1-4につき,特定領域研究「液液界面ナノ領域の化学」への協力研究として通算3回の公開シンポジウム(大阪,仙台)にてポスター発表した.昨年度までの成果については主にAnal.Bioanal.Chem.(2003,in press)に掲載する.
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