研究概要 |
本研究の初年度である平成13年度において実験装置の電子回路を改善して測定の高速化を実現・終了しているので、2年目の今年度は、分析法の高感度化を目指して、主として分析種を化学反応によりガス(無体)に変換してプラズマ中に導入する方法を開発し、下記のような研究成果を挙げることができた。 1.水素化物生成-高出力窒素マイクロ波誘導結合プラズマ発光分光分析による鉄鋼と高純度銅中のヒ素およびアンチモンの同時定量 プラズマ(MIP)中に水素化物生成反応よって同時に発生した水素化ヒ素(アルシン)および水素化アンチモン(スチビン)を連続的に導入して高出力窒素マイクロ波誘導プラズマ発光分光分析によるヒ素およびアンチモンの同時定量に関する基礎的な検討を行った。その結果,検量線が両元素で10〜10,000ng/mlの濃度範囲において良好な直線性を示し,検出限界はそれぞれ4.13および4.50ng/mlであった。本法を鉄鋼中のヒ素およびアンチモンの同時定量に応用し、標準値とよく一致する分析結果を得ることができた。 2.気相試料導入-誘導結合プラズマ発光分光分析による鉄鋼中の銅の定量 プラズマ(ICP)発光分光分析による銅の定量に関する基礎的な検討を行った。その結果,検量線が10〜500ng/mlの濃度範囲において良好な直線性を示し,検出限界は1.5ng/mlであった。鉄鋼分析の際に、主成分である鉄の干渉を除去するために銅と鉄の分離を行い、本法を応用した。鉄鋼標準試料中の銅の定量に本法を適用して、満足すべき結果を得た。 3.気相試料導入-大気圧ヘリウムマイクロ波誘導結合プラズマ発光分光分析による水溶液中の炭素の定量 ヘリウム-マイクロ波誘導プラズマ(MIP)を励起源に用いて,水溶液中の炭素イオンおよび炭酸水素イオンを酸との反応により二酸化炭素に変換して,炭素の定量に関する基礎的な検討を行った。その結果,最適条件下で,選択波長が193.09nmと247.86nmで,検量線は100〜10,000ng/mlと100〜20,000ng/mlで直線性を示し,その検出限界はそれぞれ7.89ng/mlと8.10ng/mlであった。本法を用いて環境水中に含まれる炭素の定量に応用した。標準添加法を用いることにより炭素の定量を行った結果,本法の有用性を実証することができた。 なお、上記の今年度に得られた研究成果は、学会発表し、さらに研究論文として公表した(裏面参照)。
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