研究概要 |
今年度は研究の最終年度であるので、これまでに確立した高感度な高出力窒素マイクロ波誘導プラズマ発光分光分析法(以下、N_2MIP-AESと略記)を用いて、分析の高速化を目指して多元素同時分析を検討し、主として鉄鋼分析に応用して、下記のような研究成果を得ることができた。 1.水素化物生成-N_2MIP-AESによるヒ素,ビスマスおよびアンチモンの同時定量 分析対象元素としてヒ素,ビスマスおよびアンチモンを選び,MIP中に水素化物生成反応よって同時に発生した水素化ヒ素(アルシン),水素化ビスマス(ビスムチン)および水素化アンチモン(スチビン)を連続的に導入してヒ素,ビスマスおよびアンチモンの同時定量に関する基礎的な検討を行った。良好な直線性を有する検量線が得られ,検出限界はヒ素,ビスマスおよびアンチモンでそれぞれ7.13,116および14.60ng/mlであった。本法を鉄鋼中のヒ素,ビスマスおよびアンチモンの同時定量に適用し,それぞれの標準値とよく一致する分析値が得られ,本法の有用性を実証することができた。 2.水素化物生成-N_2MIP-AESによるヒ素,ビスマス,アンチモンおよびセレンの同時定量 ヒ素,ビスマス,アンチモンおよびセレンの4元素を,MIP中に水素化物生成反応よって同時に発生した水素化ヒ素(アルシン),水素化ビスマス(ビスムチン),水素化アンチモン(スチビン)およびセレン化水素を連続的に導入してN_2MIP-AESによる同時定量を行った。検出限界はヒ素,ビスマス,アンチモンおよびセレンでそれぞれ7.80,131,14.50および28.99ng/mlであった。本法を鉄鋼中のヒ素,ビスマス,アンチモンおよびセレンの同時定量に適用した。鉄鋼標準試料中のヒ素,ビスマス,アンチモンおよびセレンの同時定量値は,それぞれの標準値とよく一致する分析値が得られた。 3.水素化物生成-N_2MIP-AESによるビスマスの定量 分析対象元素としてビスマスを選んだ。検量線が300〜30,000ng/mlで直線性を示し,その検出限界は102ng/mlであった。本法を適用し鉄鋼中に含まれるビスマスの定量に応用した。鉄鋼標準試料中のビスマスの定量値は,標準値とよく一致した。 なお、上記の研究成果は、学会発表し、研究論文として学協会の学術雑誌に公表した。
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