研究概要 |
イオンビームはその飛跡にそって高い密度でエネルギーを付与する.その飛跡のまわりのナノメートルオーダーの半径内の吸収線量は高分子がゲル化する線量を超える.本研究は,これを利用して,ナノスケールのゲル細線を作製しようとするものである.前年度は,ポリシロキサンについて,イオン照射により生成する不溶分をメンブレンフィルターにより分離し,重量を測定することによりゲル細線の存在を確認し,その大きさを調べたが,本年度は,さらにデータを蓄積するとともに,イオンビームによる違いについて検討を進めた.460MeVアルゴンイオン、350MeVネオンイオン、220MeV炭素イオンビームを照射の場合について単位体積あたりの吸収エネルギーに対してゲル分率を計算すると,ネオン,アルゴン,炭素イオンの順となる.また,ゲル化線量以上でのγ線照射の場合のゲル分率に比べ,一桁小さい値となった.イオンビームでは中心付近ではゲル化に必要な線量よりはるかに大きいエネルギーが付与される.ことため,中心付近では無駄にエネルギーを消費する.そのため,与えたエネルギーに対して計算すると小さな値となるのである. また,イオンビーム以外の放射線で高密度に反応を起こさせる方法を探る目的で,放射線により連鎖反応を起こす系であるイオドニウム塩のアルコール溶液について,その収率を支配する因子を調べた.
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