研究概要 |
近年,強磁場を材料、反応プロセスへ応用する動きが急速に拡がりつつある.しかし化学反応制御に磁場を用いる手法は,ラジカルペア反応や磁気流体力学効果などの特殊な場合を除き,ほとんど確立されていないのが現状である.我々はこのテーマに新しい手法を用いて挑戦してきた.その手法とは,機能性材料の合成過程に強磁場を印加し,磁場により材料の形態や機能を制御する.そのようにして制御された材料を,電極や触媒などに用いることにより,化学反応を制御するというものである.これを具体的に実現するために本研究では,反磁性の磁場配向が期待できる導電性ポリマーを磁場印加しながら電解重合し(磁気電解重合),その電解重合膜を修飾電極に用いることにより,電気化学反応を制御することを目的としている. 代表的な導電性ポリマーであるポリピロールのモルフォロジーや酸化還元に伴うドープ、脱ドープ過程が磁気電解重合により変化することが明らかとなっている.この磁気電解重合膜の性質にはまだまだ未解明の点が多く,様々な可能性を秘めているものと期待できる.初年度は主に種々の化学種の特異吸着と電気化学的性質を調べた.その結果,磁気電解重合膜にはサイズの大きな陽イオン、芳香族化合物の特異吸着し,ポリピロールの酸化還兀挙動を大きく変えることが明らかとなった、さらにアミノ酸などの不斉分子も特異吸着しやすいことが示唆された.このように,磁気電解重合膜を用いた新しい反応場構築のための重要な基礎的情報が得られた.
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