研究概要 |
我々は機能性材料の合成過程に強磁場を印加し,磁場により材料の形態や機能を制御する手法を開発している.本研究では,そのようにして制御された材料を,電極や触媒などに用いることにより,化学反応を制御することを目指している.具体的には,磁場配向が期待できる導電性ポリマーを磁場中で電解重合し(磁気電解重合),その重合膜を修飾電極に用いて電気化学反応を制御するという計画である. 代表的な導電性ポリマーであるポリピロールのモルフォロジーや酸化還元に伴うドープ・脱ドープ過程が磁気電解重合により変化することが明らかとなっている.ただ,この磁気電解重合膜の性質にはまだまだ未解明の点が多く,様々な可能性を秘めているものと期待できる.新たな可能性を探索するために今年度は,フェロシアン/フェリシアンの酸化還元系を取り込んだポリピロール膜の作製に磁気電解重合を適用し,膜の電気化学的な挙動を調べてみた.Fe(CN)_6^<3->がドーピングされたポリピロール膜のボルタモグラムにはポリピロール自身の酸化還元に加えて,0.2V付近に膜内に取り込まれたFe(CN)_6<3->の酸化還元応答が観察される.この膜を磁場中で電解重合してそのボルタモグラムを測定してみた,磁気電解重合膜では0.2V付近の酸化還元ピークが重合時の磁場の増加とともに小さくなってゆき,5テスラの磁場中で作製した膜では消失した.かわって-0.3V付近に新たな酸化還元ピークが現れた.このピークは重合時のK_4Fe(CN)_6の濃度に依存することから,フェロシアン/フェリシアンの酸化還元であると結論づけられた.この磁場効果は酸化還元に伴うアニオンのドーピング・脱ドーピングが磁気電解重合膜で起こりにくくなっていることに起因しているものと考えられる.このように,フェロシアン/フェリシアンの酸化還元反応のように,直接磁場を印加しても何ら磁場効果は観察できないような反応でも,磁気電解重合法によりその挙動を制御できることを見いだした.
|