酸化チタン光触媒は、光照射に伴ともない強い酸化力を示し、ほとんどの有機物を二酸化炭素にまで分解できることが知られている。これまで、その分解反応はもっぱら酸化チタン表面における反応と考えられてきた。しかし最近、酸化チタン上に生成する活性酸素種は酸化チタン表面上のみ存在するのではなく、酸化チタンから脱着し、気相中を拡散して、酸化チタンに接触していない物質をも酸化することを確認した(非接触酸化反応)。しかし、酸化チタンに照射した光は、酸化される基板の表面にも照射されることから、光が酸化チタンを励起することのみに使われるのか、あるいは拡散した活性酸素種の励起または分解(過酸化水素のヒドロキシルラジカルへの分解など)や、あるいは基板そのものの励起にも使われるのか、明らかにされていなかった。そこで、フォトマスクを利用し、一定領域のみに光を照射することにより、非接触酸化反応を行った。その結果、基板上の光を照射した部分のみでなく、その周囲も徐々に酸化されることがわかった。このことから、光は酸化チタンの励起にのみ使われ、拡散した活性種や基板の励起は必要でないことが明らかとなった。すでに非接触酸化反応は、不飽和炭化水素を二酸化炭素にまで酸化できる強い酸化反応であることが示されている。したがって、本研究の結果と合わせて考察すると、気相中を拡散している活性酸素種はヒドロキシルラジカルなどの強い活性種であり、それがそのまま基板と反応していると考えられる。また、非接触酸化反応が表面パターニングに使えることが示唆された。
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