本研究ではガス分子との反応・吸着などの相互作用が期待できる2種類の半導性酸化物結晶(CuOおよびZnO)を原子スケールで近接させてナノ空間を設定し、その空間に被検分子(直鎖アルコール)がとらえられることにより、酸化物(CuO)-気体分子-酸化物(ZnO)間相互作用を両半導性物質間のトンネル電流として計測することにより電気信号に変換し、生体系類似の分子の形状を認識しうるセンサー構成に成功した。0.1nm以下に近接されたCuO-ZnO結晶間ナノ空間に直鎖アルコール分子を作用させた結果、同空間に分子サイズの小さいメタノール、エタノールの選択的検知機能を付与させることに成功した。ナノ空間はSTM技術の応用により容易にその大きさのサブnmスケールでの制御が可能とし、ねらった分子のサイズに対して最適な反応場の空間設計が可能となるという新しい分子認識素子設計指針を提示した。本研究のように配置制御された複数種の触媒表面が構成する空間を設定することで分子の多点認識が可能となり、分子認識の精度が増す。ナノ空間に捉えられた分子を取り巻く電子雲や双極子はそのごく近傍を通過するトンネル電流の輸送機構に少なからぬ変更を与えるはずで、この解析・評価により分子の情報が得られる仕組みである。本研究において界面を構成する結晶面の面方向を変えるなど簡便な操作において、分子認識機能発現状態を制御することも可能で、複数種の機能表面による分子の多点認識とその電気信号による情報取得による分子認識の概念もあわせて考案された。
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