研究概要 |
クリーンで高効率な燃料電池の実用化には高性能電極触媒の開発が必要不可欠である。それには、表面の組成、結晶構造、実作用面積等が良く規定された電極を用い、反応過程をin-situ(その場)解析して触媒設計指針を得ることが本質的である。本研究は高精度電気化学水晶振動子ナノバランス(EQCN)法を用いて、燃料電池電極反応をその場解析し、高性能な電極触媒設計指針を得ることを目的とする。本年度は、以下の研究成果を得た。 1. 10MHz基本振動のEQCNシステム(電気化学セル,雰囲気制御チャンバ)を構築し、その測定限界の±0.1Hz(±0.4ng/cm^2)の精度と時間安定性を実現できた。 2.当研究室で新たに見出したPt-Fe合金電極を水晶振動子上に同時スパッタ法で調製し、過塩素酸電解液中での合金電極の電気化学的安定化処理におけるFe成分の溶出過程をEQCNでその場解析できた。また、EQCNの結果と、溶液中の溶解イオン量のICPによる定量分析、吸着水素電気量変化の解析、および電気化学トンネル顕微鏡観察から、電気化学的安定化処理によりFe成分の溶出と同時に数原子層のPt皮膜の生成・再配列過程が起こっていることを明確に示すことができた。 3.安定化したPt-Fe合金電極と単味Pt電極にCOを飽和吸着させ、その電気化学的酸化過程をEQCNでその場解析できた。アノード掃引時のボルタモグラムでは、両方の電極ともに、水素脱離波が消え400mV付近にプレピーク(P_1)が、700mV付近にCO酸化ピーク(P_2)が観測された。質量変化と電気量の関係を解析し、単味Pt電極のP_1で脱離する化学種はCOOH種の1電子酸化脱離であり、他方、Pt-Fe合金電極のP_1では吸着力の弱いCOが酸化されている事を明らかにできた。P_2では、COの酸化脱離反応が起こるにもかかわらず。両電極ともに質量が増加した。これはCOが酸化脱離して出来た空きサイトの一部に水和した過塩素酸アニオンが吸着している可能性が高いことを示した。
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