研究概要 |
金属セリウムを酸化被膜のついたまま,2-メトキシエタノール中に入れ,これをオートクレーブ中200-250℃で反応させ,酸化被膜由来の粗粒のセリアを除去すると,褐色透明の溶液が得られた。この溶液に水を加えると,着色が薄くなるだけで,沈殿は生じなかったが,塩の溶液を加えると直ちにセリアが沈殿した。この溶液の電子顕微鏡観察および溶液自体のX線回折によりこの溶液は粒径2nmのセリウム粒子を含む透明コロイド溶液であることを明らかにした。反応温度を250℃以上にすると反応温度にしたがって生成するセリアの粒径は増大し,反応温度300℃では粒径8nmのセリア粒子を含む透明コロイド溶液が得られた。この溶液から得られたセリア粉体は極めて容易に焼結し,500℃という低温でも結晶成長を起こした。セリウムのアルコキシドを原料に用いても,同様の粒径を持つセリアが得られたが,透明コロイド溶液とはならず,凝集体が得られた。したがって,セリウム粒子上の酸化被膜が高温で溶解し,金属セリウムが溶媒と接触した段階で,急激な反応が起こり,水素とセリウムアルコキシドが生成し,反応で生成したセリウムアルコシドがそのまま熱分解してセリア超微粒子を与え,この時,溶液内で一様に結晶核の発生が起こるため,凝集のない,セリア超微粒子のコロイド溶液が得られたと考えられた。同様の方法を用いて,プラセオジム,ネオジム,サマリウム,イッテルビウムの酸化物超微粒子を含む透明コロイド溶液の合成に成功した。
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