本研究は、層状化合物のトポタクチック構造変換反応を利用して多結晶基板や非結晶基板上で配向性薄膜を作成する低コスト、省エネルギーセラミックス薄膜プロセスの開発を目的とする。平成13年度は、層状チタン酸H_<1.07>Ti_<1.73>O_4をn-propylamine溶液で処理して層状チタン酸をナノシート状に剥離し、ナノシートゾル溶液を作製できた。このゾル溶液を用いてディッピング法でステンレス基板上に層状チタン酸の配向性薄膜の作成に成功した。作製した層状チタン酸薄膜を用いて酸化チタンやBaTiO_3薄膜作成について予備的検討を行った。その結果、層状チタン酸薄膜を空気中で加熱処理すると、600℃では、[103]結晶軸方向へ強く配向するアナターゼ型TiO_2薄膜が得られ、800℃では、[110]結晶軸方向へ強く配向するルチル型TiO_2薄膜が得られた。さらに、層状チタン酸薄膜をBa(OH)_2溶液中で水熱処理することにより、[110]結晶軸方向へ強く配向するBaTiO_3薄膜を作製できる基本的知見が得られた。 平成14年度は、高品質配向性薄膜作成条件を中心に、次の課題について取り込みを行った。 1.平成13年度で作製した酸化チタン薄膜は多数な亀裂があり、この問題の起因と解決法について検討した。亀裂の原因は主に基板表面の亀裂と層状チタン酸薄膜作製時に発生する気泡によるものであることを明らかにした。ステンレス基板表面亀裂の研磨除去と層状チタン酸薄膜作成におけるディッピング-乾燥処理繰返しでスムーズな薄膜が得られた。 2.BaTiO_3の薄膜作製について、水熱処理条件と膜表面特性と相関関係を調べた。水熱処理温度およびBa(OH)2溶液濃度の増加に伴い、BaTiO_3粒子が成長し、[110]結晶軸方向への配向性が増加するが、膜表面が粗くなる。すなわち、最適温度、濃度条件が有することを突き止めた。
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