研究概要 |
カリックスアレーンの酸素配位サイト、アレーン配位サイト両配位部位への金属錯体フラグメントの位置選択的、段階的な集積法の開発を目指し、カリックス[4]アレーン類への7-10族金属錯体フラグメントの新規導入反応を検討した。まず、カリックス[4]アレーン類とロジウム二核錯体[Rh(cod)(OMe)]2の反応では、初めに導入されるRh(cod)フラグメントはアレーン配位サイトに選択的に配位するのに対し、第二のRh(cod)フラグメントは酸素配位サイトに選択的に配位することを見出した。このことは第一のRh(cod)フラグメントがアレーン配位サイトに配位することにより酸素配位サイトの配位能力が向上し、第二のRh(cod)フラグメントを配位できるようになったことを示す。この配位コントロールを利用し、位置選択的にイリジウム、ロジウムフラグメントを導入したヘテロ二核錯体を合成することにも成功した。次に、カリックス[4]アレーンと[Cp^*RuCl]4との反応からはCp^*Ruフラグメントがアレーン配位サイトに1つ、あるいは2つ導入された錯体を得た。興味深いことに、後者の錯体ではCp^*Ruフラグメントが隣り合った芳香環に配位した構造となっており、従来報告されていた関連するCp^*Rh, Cp^*Irなどの錯体とは異なった位置選択性で反応が進行することが明らかとなった。さらに、t-ブチルカリックス[4]アレーンと(Ph4P)[ReOC14]との反応および酸化銀による酸化でアニオン性ジオキソレニウム錯体を合成し、これを利用することによりレニウム-パラジウムおよびレニウム-ロジウム二核コアをカリックスアレーンのキャビティ内に持つ錯体の合成にも成功した。これらはカリックスアレーンのキャビティ内に異種遷移金属・多核コアを構築した最初の例であり、カリックスアレーン上での多核錯体合成に重要な知見である。
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