配位隣接効果に基づく触媒的炭素―炭素結合生成反応の超効率化

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13650902
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 伊丹 健一郎 京都大学, 工学研究科, 助手 (80311728)
• キーワード: 配位隣接効果 / パラジウム / Mizoroki-Heck反応

研究概要

本研究の目的は配位隣接効果に基づく多種多様な触媒的炭素-炭素結合生成反応の超効率化であるが、平成13年度は「ピリジル基を有するビニルシランの分子間カルボパラデーション反応の開発」を行った。
触媒的カルボパラデーション反応は、Mizoroki-Heck反応をはじめ有機合成に幅広く用いられてきた重要な反応である。しかしながら、分子間反応においては適用可能な反応基質が非常に限られていることから、配位隣接効果に基づく超効率化をはかる意味では最適であると考えた。特に今回基質として用いるビニルシランの触媒的カルボパラデーション反応は報告例が少なく、また必ずしも効率的には進行しないことが知られている。
Pd_2(dba)_3/tri-2-furylphosphine触媒およびEt_3Nの存在下、アルケニル(2-ピリジル)シランは種々の芳香族ヨウ化物とMizoroki-Heck型のカップリング反応を起こし、置換ビニルシランを高収率かつ完全な立体選択性で与えることが明らかとなった。同条件下で他のアルケニルシランが同様の反応を起こさないことから、ケイ素上のピリジル基による配位隣接効果が強く示唆された。また、ピリジル基による配位隣接効果は錯体化学的な実験によっても支持された。
さらに、得られた置換ビニルシランはPdCl_2(PhCN)_2触媒およびTBAFの存在下、芳香族ヨウ化物とHiyama型のクロスカップリング反応を起こし、多置換オレフィン類を高収率かつ完全な立体選択性で与えることも明らかとなった。この反応は、分子内配位子であるピリジルシリル基の着脱性を実証するばかりでなく、立体選択的な多置換オレフィン合成を実現する重要な鍵反応となることを示したものでもある。

研究成果

• [文献書誌] Kenichiro Itami: "Diversity-Oriented Synthesis of Multisubstituted Olefins through the Sequential Integration of Palladium-Catalyzed Cross-Coupling Reactions"J. Am. Chem. Soc.. 123. 11577-11585 (2001)
• [文献書誌] Kenichiro Itami: "Unusual Metal-Dependent Acceleration and Deceleration in the Metal-Catalyzed Hydrosilylation of Olefins Using Pyridyldimethylsilanes"Chem. Lett.. 1088-1089 (2001)
• [文献書誌] Jun-ichi Yoshida: "Pyridylsilyl Group as a Multifunctional Phase Tag for Solution-Phase Synthesis"J. Synth. Org. Chem. Jpn.. 59. 1086-1094 (2001)
• [文献書誌] Kenichiro Itami: "Unusually Accelerated Silylwethyl Transfer from Tin in Stille Coupling : Implication of Coordination-Driven Transmetalation"J. Am. Chem. Soc.. 123. 8773-8779 (2001)
• [文献書誌] Kenichiro Itami: "Regioselective Catalytic Allylic Alkylation Directed by Removable 2-PyMe_2Si Group"J. Am. Chem. Soc.. 123. 6957-6958 (2001)
• [文献書誌] Kenichiro Itami: "Palladium-Catalyzed Cross-Coupling Reaction of Alkenyldinethyl (2-pyridyl) silanes with Organic Halides"J. Am. Chem. Soc.. 123. 5600-5601 (2001)