研究概要 |
オルト置換アミノホルミルフェロセンを合成し,有機マグネシウム,リチウム,および亜鉛化合物のホルミル基への付加反応の立体化学に関し検討した。臭化エチルおよびフェニルマグネシウムは高い立体選択性でホルミル基へ付加し,対応するアミノアルコールを単一のジアステレオマーとして生成した。一方,ジエチル亜鉛との反応も単一のジアステレオマーのアミノアルコールを生成するが,生成物の立体化学は有機マグネシウムとの生成物と異なっていた。次に,オルト置換アミノアシルフェロセンを合成し,種々の金属水素化物によるカルボニル基の還元反応を検討した。水素化アルミニウムリチウムや水素化ホウ素ナトリウムとは中程度の選択性で還元反応が進行し,対応するアミノアルコールが生成した(35%de)。水素化ジイソブチルアルミニウムを用いると,対応するアミノアルコールが単一のジアステレオマーとして生成するが,この場合のアミノアルコールの立体化学は水素化リチウムアルミニウムとの反応より得られた生成物と異なっていた。上記の付加反応及び還元反応において,立体選択性は有機金属種の種類によりアミノ基とホルミル基のキレーションまたはノンキレーションコントロールのいずれかにより制御されていると考えられる。光学活性アミノアルコールを変換し,光学活性フェロセン1,4-ジオールおよびジホスフィン誘導体を合成し,不斉合成反応への応用を検討した。ジホスフィンをパラジウム錯体の配位子として用い,不斉アリル置換反応を行った。反応は円滑に進行するが,不斉収率は最大30%eeと低い値に終わった。1,4-フェロセンジオールをルイス酸錯体の配位子として用い不斉Diels-Alder反応を検討した。ルイス酸としてスカンジウムトリフラートを用いたときに最大90%eeの高い選択性で反応が進行し,この配位子が優れた立体反応場を構築することが判明した。
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