研究概要 |
平成13年度の研究において合成した光学活性1,4-フェロセニルジオールを各種ルイス酸錯体の配位子として用い,シクロペンタジエンと3-アシルオキサゾリジノンとの不斉ディールズーアルダー反応において各錯体触媒の性能に関して検討した。スカンジウムとの錯体がこの反応を円滑に触媒し,対応するendo生成物が最大91%eeと高いエナンチオ選択性で生成することが分かった。この反応には2,6-ルチジンとMS-4Aの添加が不可欠であり,どちらかが欠けると著しく選択性は低下する。1,4-フェロセニルジオールの置換基をメチル,フェニル,1-ナフチル,2-ナフチル基と変えて同様の反応を行うと,フェニル基の場合に最も高い選択性が得られた。o-メチルフェニル基では返って選択性が著しく低下してしまい,10%ee程度の選択性しか得られない。1,4-フェロセニルジオールの置換基がフェニル基の場合,結晶化に成功し,X線構造解析を行った。一つのユニットが水素結合で結合した1,4-フェロセニルジオールの三量体構造をとっており,もう一つのユニットが結晶溶媒のベンゼンをサンドウィッチしている極めて特異的な構造をとっていることが判明した。構造解析よりこのフェロセン化合物の分子設計をし,3,5-ジメチルフェニル誘導体の合成を行ったところ更にこの反応の選択性を向上させることに成功した。次に,1,4-フェロセニルジオールを配位子として用いて,α-メチルスチレンとグリオキシル酸ブチルとのカルボニルエン反応の検討を行った。金属錯体としてはチタン錯体が最も良好な結果を与え,最大70%eeで付加生成物を生じることが分かった。この反応には,酢酸を添加するとエナンチオ選択性の向上が見られた。
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