研究概要 |
1.キラルな遷移金属ルイス酸を触媒とする不斉[2+2]付加環化反応 キラルなBINAP, SEGPHOS, pybox, boxax, MOPなどを配位子とするカチオン性パラジウム錯体を用い,ケテンとシクロヘキサンカルボキサアルデヒドの不斉[2+2]付加環化反応を試みたが不斉選択性は得られなかった。しかし,キラルなBINOLまたはその置換体のジアニオン二分子で修飾したテトラアルコキシボレートを対アニオンとするパラジウム錯体を用いると,低収率ながら,10〜30%eeの選択性が得られた。この方法では,BINOL類のジアニオンがケテンによりアセチル化されるため,収率や不斉選択性を向上させることはできなかった。しかし,ケテンと反応しないキラルなカウンターアニオンを設計できれば,触媒的不斉合成が可能になるものと思われる。 2.遷移金属ルイス酸を触媒とするキラルなアルデヒドとケテンのジアステレオ選択的タンデム[2+2]付加環化-アリル転位反応 γ-位に不斉中心を有する種々のキラルなα,β-不飽和アルデヒドとケテンのジアステレオ選択的タンデム[2+2]付加環化-アリル転位反応を検討した。その結果,3-フェニル-1-シクロヘキセンカルボキサアルデヒドの反応で、試みたアルデヒドの中で最高の57%deの選択性が得られた。[2+2]付加環化生成物であるβ-ラクトンの開裂によって生じる双性イオンの立体選択的な環化により,生成物の立体化学を合理的に説明できた。
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