研究概要 |
昨年度までに、パラジウム触媒存在下、トシル酸アリル1分子と内部アルキンあるいは末端アルキン2分子から三置換、五置換ベンゼンが選択的に得られることを見出している。まえ、トシル酸無水物を添加剤として加えることによりトシル酸アリルの代わりに直接アリルアルコールを反応に用いることに成功した。そこで本年度は、まず、アリルアルコールの類縁体であるプロパルギルアルコール、アレニルアルコール、ベンジルアルコール等のトシル酸エステルを用い反応の適用性について検討した。しかしながら、これらを用いた反応では予想された芳香環生成物を得ることができなかった。次に、アルキンとしてジインを用いることにより縮合環化合物の選択的合成を検討した。種々条件を検討した結果、1,6-ジインからはインダン誘導体、1,7-ジインからはテトラリン誘導体を得ることに成功した。収率は大きく下がるものの、1,8-ジインからも7員環が縮環したベンゼン誘導体も合成することができた。この反応においてもトシル酸無水物を添加することによりアリルアルコールを利用することができた。非対称なジインを用いた場合、生成物は位置異性体の混合物となることが予想されたが、アルキン上の置換基の電子的性質または立体的嵩高さが大きく異なる場合には、一方の位置異性体が高い選択性で得られた。また、ジプロパルギルエーテルなどを用いると、酸素原子を含むヘテロ環の構築にも利用できた。
|