研究概要 |
イミダゾリウムパラトルエンスフォン酸塩イオン性液体中でピロールの電解酸化重合(電位掃引酸化重合)が円滑に進行することを見出した。さらに、その重合析出速度は従来用いられる水や有機溶媒中でのものよりも速いことが分かった。一般にピロールなどの電解重合では、重合成長過程のオリゴマーの拡散速度が遅く、陽極界面近傍に滞留している方が陽極上への析出にとって好都合となる。このため、重合析出速度は電解液の粘性に大きく依存し、高粘性なイオン性液体中においては、その速度が増加したものと考えられる。 一方、SEMによるポリピロール膜の表面観察において、常用される水や有機溶媒中で得られた膜表面にはサイズの差こそあるが、いずれも粒塊の存在が認められた。これに対し、イオン性液体中において得られたポリピロール膜は、倍率10,000倍では粒塊が見られない極めて平滑なものであることが明らかとなった。 さらに、イオン性液体を反応メディアとすることで得られたポリマーフィルムの電気化学的容量密度や電気電導度もまた常用される水や有機溶媒中で得られたものと比較して大幅に向上することが分かった。特に電気電導度は3〜5桁も上昇しており、これはドープ率の増加に起因していることが明かとなった。また、重合終了後のイオン性液体中に残存するモノマー分子は、クロロホルム抽出により容易に分離除去され、5回繰り返し利用されたイオン性液体中においても重合速度の減少は見られなかった。
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