研究概要 |
本研究は,シリコーンを有機ケイ素反応剤として用い,有機合成反応をおこなうことを目的としておこなった。すなわち,ケイ素原子上にアリール基,アルケニル基などの官能基をもつシリコーンを新規な有機ケイ素反応剤として捉え,炭素-炭素結合生成反応の開発をめざした。環状シロキサンや鎖状のポリシロキサン,オリゴシロキサンを用い,パラジウム触媒によるクロスカップリング反応をおこなった。アリール基をもつシロキサンに関しては,市販のケイ素化合物を用いた。ポリシロキサンとして用いたものは,高耐熱性のシリコーンオイルとして市販されているものである。一方,アルケニルシロキサンは入手容易なヒドリドシロキサンとアセチレンのヒドロシリル化反応により合成した。ケイ素上にアリール基を有するシロキサンの反応では酸化銀を活性化剤に用いたところ,収率良くクロスカップリング反応が進行した。アルケニル基をもつシロキサンの反応においては,対照的に,フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)が良好な結果を与えるが,酸化銀ではまったく反応しなかった。 さらに,ロジウム触媒を用いてα,β不飽和カルボニル化合物との反応をおこなったところ,共役付加反応が進行することがわかった。また,反応系中でオリゴシロキサンを形成すると考えられる,クロロシランー炭酸カリウム水溶液の組み合わせで同様な反応をおこなったところ,この場合にも非常に収率良く共役付加反応が進行することがわかった。活性化剤としてフッ化テトラブチルアンモニウムも有効であることがわかり,意外にも反応溶媒に水が共存していると効率よく反応することもわかった。 一方,イリジウムを触媒として用いると,活性化剤としてフッ化テトラブチルアンモニウム存在下,溶媒としてTHF-水混合系を用い,α,β不飽和カルボニル化合物と反応をおこなうと,系中に水が存在するにもかかわらず,溝呂木-Heck型反応が進行することも明らかにした。
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