研究概要 |
本研究は光官能性イニマーのリビングラジカル機構を駆使して代表的ビニルモノマーであるスチレン、メタクリル酸エステルのハイパーブランチポリマー(HB)を合成する一般的手段を提出する。本年度にえられた実績は以下の通りである。 1.イニマーN, N(diethylaminodithiocarbamoyl)methylstyrene(1)のラジカル重合をUV照射下で行い、hyperbranched polystyreneを合成した。その動力学解析より、重合はリビングラジカル機構で進行すること、生成ポリマーは溶液中で球状のナノ剛体球であることを明らかにした。 2.1とスチレンのラジカル光共重合を行い,NMRより重合反応性比を算出した。その結果,重合は理想重合形式でリビング的に進行することを見出した。すなわち分岐度と分岐間距離を制御したHBの合成法が可能となった。これは従来の乳化重合に替わる有機溶媒系での超微粒子合成法と位置づけできた。 3.1と無水マレイン酸とのラジカル共重合より、交互共重合型HBを合成した。これはミサイルドラッグ"スマンクス"の癌認識部位と同じ化学成分でその血液中でのサイズを任意に設計できる長所をもち、医用材料への応用展開できることを発見した。 ここで合成したhyperbranched polymer群は表面に重合開始基となるカルバメート基をもつマクロイニシエータと捕らえることができ、グラフト重合で多成分系微粒子かつ水溶性微粒子に容易に変換できる。簡単なプロセスで乳化重合にかわる高分子微粒子の新製造技術として期待できるものである。
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