研究概要 |
環境問題の高まりを受け,安全でシンプルなモノマーから用途にあったさまざまな高分子を合成することが求められている。ポリオレフィンは,特にクリーン度の高いプラスチックとして,環境負荷の大きな材料を代替するための高性能化・高機能化が期待されている。本研究は,最も単純なオレフィンおよび共役ジエンであるエチレンと1,3-ブタジエンの共重合触媒を開発することにより,新規な炭化水素系ポリマーを創製しようとするものである。平成14年度はオレフィン共重合触媒として最も優れているジルコノセン触媒ならびに近年エチレン重合触媒として注目されているコバルト系錯体触媒についてエチレンブとタジェンの共重合能について詳細に検討した。さまざまなジルコノセン錯体をPh_3CB(C_6F_5)_4-^iBu_3Alにより活性化した触媒系により40℃で共重合を行った結果,C_<2v>対称のビス(η^5-シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,ビス(η^5-インデニル)ジルコニウムジクロリド,ジメチルシリレン架橋ビス(η^5-シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドではまったくポリマーが生成しないのに対し,C_sおよびC_2対称の架橋型錯体を用いるとポリブタジエンが副生するものの90%以上の選択率でエチレン-ブタジエン共重合体が得られた.特にジフェニルメチレン架橋(η^5-シクロペンタジェニル)(η^5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド(I)を用い0℃で重合を行うとほぼ選択的に共重合体が得られた.^<13>CNMRスペクトルより生成ポリマーはエチレン連鎖中に約8モル%のtrans-ビニレンと約20モル%のシクロペンタン環を有するエチレン-シクロペンテン共重合体と類似の構造であることがわかった.重合活性ならびにブタジエン含率は錯体の構造に依存し,I>その他のC_s対称性錯体>C_2対称性錯体の順に低下した.ついでエチレン重合に高活性を示すビスイミノピリジン配位子を有する塩化コバルト(II)とメチルアルミノキサン(MAO)からなる系によりエチレン-ブタジエン共重合を検討した.ブタジエンの添加に伴い重合活性は大きく低下するが,共重合体は得られなかった。重合条件によっては単分散のシスポリブタジエンが得られることからブタジエンの単独重合を検討した結果,塩化コバルト-MAOという非常に単純な触媒系が0℃においてブタジエンのリビング重合を高cis-1,4選択的(>99%)に進行させることを見いだした.
|