不斉重合に用いるための基本反応として不斉アリル化反応、不斉アルドール反応を取り上げ、モノマーの合成、重合法について検討を行った。 不斉アルドール重合:新規モノマーと、してビスシリルエノールエーテル型モノマーを新たに合成した。シリル基にはトリエチルシリル基を用いることで、モノマーを安定に単離することに成功した。トリエチルシリル基の存在は、不斉反応の立体選択性にも影響を与え、通常用いられるトリメチルシリル基に比べて不斉選択性の向上が見られた。もう一方のモノマーとしては、ジアルデヒドが有効であり、種々のジアルデヒド類を合成し、ビスシリルエノールエーテルモノマーとの不斉重合を検討した。不斉アルドール重合の触媒としてトリプトファンから誘導されるキラルオキサザボロリジノンを用いると、生成キラル高分子主鎖中の不斉炭素のR:S比が非常に高い(97:3以上)キラル高分子を本研究で得ることができた。得られた光学活性高分子の光学純度については、キラル誘導化剤を反応させ、NMR測定により、求めることができた。 不斉アリル化重合:種々の構造を有するビスアリルシラン類を合成し、ジアルデヒドとの不斉アリル化重合を検討した。不斉アリル化重合の触媒としては、酒石酸から容易に合成できるキラルアシロキシボラン型触媒が有効であり、主鎖不斉炭素のR:S比が90:10程度のキラル高分子が容易に得られることを明らかにした。1分子内にアリルシラン部分とアルデヒドを有する構造を持つモノマーの合成にも成功し、1成分系不斉重付加反応を行った。得られたキラル高分子は主鎖にSi-Phを含むため、この結合をTBAFなどのフッ素試薬を用いて簡単に切断することができた。高分子の切断反応で得られる低分子キラル化合物をキラルカラムを用いたHPLC分析を行うことで、高分子中の不斉炭素の光学純度を見積もることに成功した。
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