炭素-炭素結合形成反応として有用な不斉アリル化反応、または不斉アルドール反応をモノマー分子間で繰り返すことにより光学活性高分子を合成できることを本研究ではじめて明らかにすることができた。 不斉アルドール重合:新規モノマーとしてビスシリルエノールエーテル型モノマーを合成した。トリエチルシリル基を用いることで、モノマーを安定に単離することに成功した。トリエチルシリル基の存在は、不斉反応の立体選択性にも影響を与え、トリメチルシリル基に比べて選択性の向上が見られた。もう一方のモノマーとして種々のジアルデヒド類を合成し、ビスシリルエノール型モノマーとの不斉重合を検討した。不斉アルドール重合の触媒としてキラルオキサザボロリジノンを用いると、高分子主鎖中の不斉炭素のR : S比が非常に高いキラル高分子を得ることができた。 不斉アリル化重合:種々のビスアリルシラン類を合成し、ジアルデヒドとの不斉アリル化重合を検討した。不斉アリル化重合の触媒としては、キラルアシロキシボラン型触媒が有効であり、主鎖不斉炭素のR : S比が90:10程度のキラル高分子が容易に得られることを明らかにした。1分子内にアリルシラン部分とアルデヒドを有する構造を持つモノマーの合成にも成功し、不斉重付加反応を行った。得られた高分子の切断反応で得られる低分子キラル化合物をキラルカラムを用いたHPLC分析を行うことで、高分子中の不斉炭素の光学純度を見積もることに成功した。
|