研究概要 |
本年度は、リビング重合を用いる精密合成技術を基盤として、糖残基を側鎖に有する糖鎖高分子と種々の機能特性が注目されているフラーレン(C_<60>)とのコンジュゲート、ならびに糖鎖高分子を枝鎖とする高密度多分岐型の特異構造高分子の合成を検討し、以下の研究成果を得た。 1.安定ニトロキシルであるDi-tert-butyl nitroxide(DBN)、スチレン、過酸化ベンゾイルより合成した付加体を開始剤とするリビングラジカル重合系により、アセチル化D-グルコサミン残基を担持したスチレン誘導体から分子量が制御された単分散糖鎖高分子を合成した。また、熱刺激によるDBN末端基の高分子ラジカル再生能を利用してスチレンとのブロック共重合体を合成した。さらに、DBN末端基を有する(ブロックあるいは単独)糖鎖高分子をC_<60>とο-ジクロロベンゼン(またはジメチルホルムアミドとの混合溶媒)中で反応させて、C_<60>に2本のポリマー鎖が1,4-付加した構造の糖鎖高分子-C_<60>コンジュゲートを得ることに成功した。これらの反応挙動を2,2,6,6-tetramethyl-1-piperidinyloxy(TEMPO)を用いる系と比較検討した結果、DBN末端ポリマーを用いる方が約30℃-50℃低い反応温度(90℃)で、ほぼ同等の反応時間、収率で目的化合物を合成可能であることを明らかにした。 2.リビングカチオン重合により合成した、構造の明確なD-グルコース担持ポリビニルエーテル型マクロモノマーを鍵化合物として、原子移動ラジカル重合法(ATRP)による多分岐高分子の精密合成を検討した。該マクロモノマーの単独ATRPならびに、グルコースより別途調製した5官能性重合開始剤を用いるATRPという2つの手法により、ともに糖担持マクロモノマーを枝鎖とする多分岐高分子が合成可能であることを明らかにした。
|