電子ドナーとアクセプターを同時に蛋白質に取り込むことにより、非共有結合を介して電子を移動させ、効率の良い光エネルギー変換材料を構築するために、水溶性ポルフィリンとキノンの共有結合化合物に対するモノクローナル抗体を作製した。得られた抗体はポルフィリンに対して強く結合した。しかしキノンに対する親和性が低いことがわかった。ポルフィリンのみならずキノンをも取り込む抗体を作製するには、ポルフィリンと結合する本抗体の抗原結合部位にキノンを結合させる部位を新たに導入する必要がある。改良策として、キノン誘導体(ここではナフトキノンのジメチル誘導体)に対して単独でモノクローナル抗体を作製し、さらに上記で得たポルフィリンを結合するモノクローナル抗体と掛け合わせた(モノクローナル抗体のハイブリッド化)。ポルフィリンと結合するモノクローナル抗体産生細胞とナフトキノン誘導体に結合するモノクローナル抗体産生細胞の両者を培地中、ポリエチレングリコールを用いて融合した。増殖する細胞全てに対してポルフィリンおよびナフトキノン誘導体それぞれに対する親和性を検定した。その中から両者に対して高い特異性と強い結合力を有する抗体を産生する細胞を選別した。このハイブリッド抗体産生細胞を増殖させて、抗体を量産した。本抗体はポルフィリンのみならずナフトキノン誘導体をも取り込むことが酵素標識抗体測定法により明らかになった。ポルフィリンの光吸収波長領域においてポルフィリンを励起したときに発する蛍光はナフトキノン誘導体添加により消光される。この消光度合は抗ポルフィリン抗体存在下では低下するのに対して、ハイブリッド抗体存在下では増大することから、ハイブリッド抗体がポルフィリンとナフトキノン誘導体の両者を同時に結合していると考えられる。
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