研究概要 |
本研究は、新規な大環状化合物の固相開環重合による分子量の非常に大きい縮合系高分子の合成方法を確立することを目的とする。本年度は、ジブチルアミノトリアジン構造を有する大環状スルフィド類の合成、その性質、および固相での開環重合について検討を行った。2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン(BADMT)とm-キシリレンジブロミド(m-XDB)との反応と引き続く液体クロマトグラフィーによる分離について検討を行い、大環状2量体(CS-2)と大環状3量体(CS-3)を優先的に合成する方法を見出した。CS-2とCS-3の溶解性や熱的性質を調べ、得られた大環状スルフィド類の環のサイズと化学的、熱的性質について明らかにした。CS-2を粉末状態で窒素雰囲気下加熱を行った結果、340℃で10分間加熱した場合、転化率25%で重量平均分子量(Mw)5400、分子量分布(Mw/Mn)1.71のポリマーが得られた。次に、CS-2に触媒としてテトラブチルホスホニウムクロリド(TBPC、5mol%)を添加し260℃で40分間加熱した場合、転化率49%でMw :108000、Mw/Mn :1.82のポリマーが得られた。同様に、CS-3にTPPC(5mol%)を添加して260℃で20分間加熱した場合、転化率42%でMw :104700、Mw/Mn:2.69のポリマーが得られた。このように、CS-2とCS-3を無溶媒で加熱することにより、容易に分子量10万以上のポリマーが得られることが分かった。この大環状スルフィド類の開環重合は、固相で進行することを期待したが、加熱前後の形状変化の観察から、この開環重合は溶融状態で進行することが示唆された。
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