研究概要 |
高度情報化に向けて,1分子で情報処理可能な"分子ナノデバイス"に関心が集まっている。分子デバイスが構築できれば,より高密度な集積媒体や高速の演算処理が可能な究極の"分子素子"ができるものと期待されている。したがって,ナノメートルスケールにおける物質構造の精密な制御は,科学技術にとって革命的な意味を持っている。そのような分子デバイスを構築する1つの方法は,精密に合成された分子1つを操作して,組織化したり,組み立てたり,切り離したりすることである。本研究では,高分子1分子をマニュピレーションする方法として,SFM(Scanning Force Microscope)法を用いて,意のままに配列・制御し,ナノ分子組織体を構築するための基礎的な知見を得ることを目的とした。本研究を遂行するため,本年度は,(1)試料の合成:重合度10,20,40,100,200の両親媒性ポリエチレンオキシド(PEO)およびポリメタクリル酸,ポリアクリル酸の末端に,ρ-スチリルアルキル着,メタクリルロイルオキシアルキル基等の疎水性の重合官能基を導入したマクロモノマーを,アニオンリビング重合法等によって合成し,詳細に特性化を行った。合成したマクロモノマーを水中ミセル重合することによって高重合度の櫛型高分子を合成した。(2)櫛型高分子のキャラクタリゼーション:合成した両親媒性櫛型高分子の分子量と回転半径を種々の媒体中で光散乱測定することによって特性化した。また,分子断面の回転半径をSAXS測定によって決定した。得られた結果を,ミミズ鎖モデルと準2定数理論を適用して,分子モデルパラメーターを決定した。(3)SFM観察:上記で合成した櫛型高分子をマイカ表面にスピンコートし,SFM観察するための条件の確立を行った。
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