研究課題/領域番号 |
13650946
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
山延 健 群馬大学, 工学部, 助教授 (40183983)
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研究分担者 |
上原 宏樹 群馬大学, 工学部, 助手 (70292620)
甲本 忠史 群馬大学, 工学部, 教授 (00016643)
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キーワード | 高分子材料 / 結晶化 / パルスNMR / モルフォロジー |
研究概要 |
高分子材料の結晶化は学問的観点からのみならず、材料の成形加工、製品化において材料の構造、物性を決定する重要な因子である。これまでは結晶化の挙動は各結晶化時間、温度における状態を低温に急冷することによりその結晶化挙動を検討されてきた。本研究ではパルスNMRを用いることにより結晶化挙動をリアルタイムに観測、測定し実際に生じている結晶化挙動を解析する手法を開発することが目的である。 まず、材料の基となる重合直後の重合パウダーについてその構造と熱処理による結晶化について解析を行った。DSC測定の結果、アイソタクチックポリプレン(i-PP)重合パウダーはペレット化された試料に比べて著しく結晶化度が低いことが明らかになった。温度可変固体高分解能NMR測定を行った結果、100℃において結晶部と非晶部のピーク強度に時間依存性があることがわかった。そこでパルスNMRにより温度可変リアルタイム測定を行った結果、重合パウダーの結晶部の運動性が温度上昇に伴って急激に上昇することが明らかになった。TEM観察の結果、等温結晶化試料、急冷試料などには通常観察される球晶またはラメラが観察されたが重合パウダーではラメラに相当するような結晶部は観察されなかった。これらの結果より重合パウダーでは結晶部は非常に小さく房状ミセルに近い状態にある結論した。 ポリブチレンナフタレートは非等温晶結晶化において温度降下速度に依存して生じる結晶の結晶形が変化することが知られている。この結晶機構を解明するためにパルスNMRによるリアルタイム測手を行った。降温速度が1℃/minの場合には2つのT_2成分が観測された。T_2の長い成分、短い成分ともに温度の降下に伴い減少したが、長い成分は280-270℃で急に減少し、その後、ある程度一定になり、240℃付近で更に急撃に減少した。これに対して、降温速度が0.1℃/minの場合には280-270℃でT_2の長い成分はほとんど変化せず、これより低温で徐々に減少した。2つの成分の割合は280-270℃で長い成分が急激に増加して逆転した。これらの結果より、ポリブチレンナフタレートの非等温結晶化においてはナフタレン同志の相互作用が非常に強いため、280℃位の高温を長時間維持することによってはじめて熱履歴を消去することが出きることが明らかになった。そして、融液状態の運動性の高い成分がβ型結晶を成長させるのに重要な成分であることも明らかにした。これらの結果より本解析手法の意義と重要性が十分立証された。
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