高分子ガラス転移機構の解明を目指し、多角的にガラス転移に関する実験を行っている。 1)非晶高分子の非常に局所的な運動がガラス転移温度でどのように凍結するかを調べるために、大きな波数ベクトルで測定が可能な熱中性子スピンエコー法を用い、ガラス転移近傍での運動のスローイングダウンを調べた。 2)ガラス状態に特徴的であるボソンピークと呼ばれる励起とピコ秒領域に観測される速い過程の空間スケールを明らかにするために2つの拘束系での非弾性中性子散乱実験を行った。1つはポリスチレンの薄膜であり、もう1つはスチレン-ブタジエンブロック共重合体である。後者では、スチレン部分を重水素化することにより、ポリスチレンガラスの壁に取り囲まれたポリブタジエンのガラス転移を非干渉性散乱を通して観測することができる。データは現在解析中であるが、予備的解析では拘束系ではボソンピークの低エネルギー側の強度が減少し、長波長フォノンの減少が示唆された。
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