カスケード理論による多相系エラストマーの高次構造解析の有用性を明らかにするために5種類のエラストマーを高分子反応やリビングカチオン重合、ゾルーゲル反応により合成した。試料は、ブチルゴム-グラフト-ポリ(エチレンオキシド)と糖を側鎖に有するブチルゴム誘導体などの両親媒性エラストマーおよびビオローゲン単位を有するアイオネンエラストマー、脂肪族系アイオネンエラストマー、さらに、ポリ(オキシテトラメチレン)とシリカ成分からなる有機/無機ハイブリッドエラストマーである。試料の小角X線散乱プロファイルにカスケード理論をベースとし、Debye-Buecheランダム二相モデルおよびドメイン間相互作用関数を組み合わせた新規モデルを当てはめた結果、ナノオーダーで凝集部のドメインの大きさやドメイン間距離、さらに、ドメイン間の相互作用距離などの構造パラメーターを求めることができた。本研究で用いた高次構造解析は、これまで透過型顕微鏡観察で分析が困難であったエラストマー材料の高次構造を明らかにする上で有用な方法であり、アモルファスマトリックス中にドメインがランダムに分散している多相系エラストマーであるならば、化学架橋体でも物理的相互作用でエラストマーとなる高分子であっても有効であることが判った。また、得られた結果と多相系エラストマー材料の熱特性や機械的特性を関係付けて、多相系エラストマーの高次構造と物性の相関を詳細に明らかにすることができた。本研究の成果は、機能性エラストマー材料の分子設計に有用な知見となると考えられ、高分子材料科学、特に、エラストマー材料の科学と工学の発展に寄与するであろう。
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