研究概要 |
今年度は高温プローブが順調に稼働しなかったため,パラフィン系でのNMR測定は進展しなかった.プローブをより高温まで利用可能に調整すると共に,より高温領域あるいは溶媒キャスト系でも磁場配向する系の探索を行った. その結果,ポリカーボネート(PC)に有機塩を添加した状態で磁場中で加熱処理することにより磁場配向することを見いだした.PCと有機塩との反応により分子量の低下が起こり,そのために配向がしやすくなったという可能性が示唆された.これは,本研究の課題である,磁場配向の分子量依存性が他の系でも示唆されたことになる.PCの場合には分子量の低下により結晶化度の増加,ラメラサイズの増大が見られるので,末端基効果があるにせよ,構造形成に分子量が影響している事は明らかである.この効果により通常磁場配向しないPCが配向可能になったと考えている. 他方,種々の分子量のポリエチレンオキシド(PEO)の水溶液の磁場配向を検討した.その結果,分子量の低いほど磁場配向が容易であることが明らかになった.更にPEO溶融系においても同様な知見が得られた.顕微鏡下での形態観察によれば,高分子量試料では比較的球晶が成長しやすいのに対して,低分子試料では球晶に至らない結晶が多く見られ,これらが配向していることが確認された.このように,分子量の相違により,構造形成過程及びその結果生じる形態が異なるため,磁場の作用の仕方もことなり,磁場配向の有無に影響してくると事が示唆された.
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