研究概要 |
本研究の目的は気象変化による海洋表層における混合過程を実験と計算によって再現し,閉鎖性海域の水質環境に及ぼす影響を解明することである.気象変化として,日照量,気温,および風によるせん断力を考え,海域の温度,密度分布および受動的物質の鉛直輸送との関係について調べるため,これまでに開発してきた密度成層流の計算方法の改良を行った.ナビエ・ストークス方程式,連続方程式,密度の輸送方程式を支配方程式とし,日照量の影響を密度の初期条件として,また気温と風の気象条件を密度の輸送方程式および運動量方程式の上部境界条件として取り込んだ. 閉鎖性海域における混合過程について,これらの改良点の検証を行うため,2次元キャビティ流についての数値実験を行った.まず,設定した日照量と気温に応じて深さ方向に温度勾配が生じ,安定な密度成層が形成される過程を再現した.次に,その成層の上の海上において一定時間一様な風が吹き続いたと仮定し,海面において一定の風応力を与えた.その結果,上部下流部側角部に鉛直方向の主循環流が形成され,これがゆっくりと発達するとともに,その下の成層流体がその発達を抑制するにような効果を示した.さらに温度勾配を持つ領域がこの主循環流によって削り取られて密度躍層が形成され,その密度界面が主循環流によって変形されてその下側の流体との混合を引き起こす混合過程が再現された.この閉鎖的な系における混合過程について,風による大気からの仕事率と密度躍層の沈降の関係を調べた結果,大気からの与えられた運動エネルギーの大部分が混合によるポテンシャルエネルギーの増加に使われたことが明らかになった.
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