本研究は、自律的水中ロボット(AUV)による浅海域(干潟、海岸、藻場など)における大域的環境モニタリングシステムを確立することを目指して、1)浅海域におけるAUVの水中航行制御技術の確立、2)浅海域におけるAUVの機体形状の設計手法の確立を目的とする。ここで、浅海域における外乱(波、潮流)に対して、姿勢制御能力が高いと思われる胸鰭運動装置を装着したAUVを考える。 本年度は、浅海波に見られる上下方向よりも大きい前後方向の波粒子運動に対して、ホバリングするために、前後方向、左右方向、上下方向に最大の推力を出すための胸鰭運動装置の鰭運動の最適化を行った。魚の胸鰭の運動学的研究から、胸鰭の動きは、種類によって、また遊泳速度によって変わることが明らかになっている。おおまかには、胸鰭の動きは、高速域における上下運動を中心とした揚力型と、低速域における前後運動を中心とした抗力型に分かれる。 非線形最適化手法を用いて、水流中と静水中における胸ひれ運動の最適化を行った。流速は0.2m/sで運動周波数は1.25Hzとした。条件として次の3つを与えた。 (1)前進方向に最大の推力を出し、上下方向には小さな推力とする。 (2)上下方向に最大の推力を出し、前後方向には小さな推力とする。 (3)横方向に最大の推力を出し、前後方向および上下方向には小さな推力とする。 その結果、(1)については、水流中では、揚力型が抗力型より大きな推力を出し、また推進効率も大きいがわかり、一方、静止中では、抗力型が揚力型より少ない消費パワーで大きな推力を出すことがわかった。
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