本研究は、自律的水中ロボット(AUV)による浅海域(干潟、海岸、藻場など)における大域的環境モニタリングシステムを確立することを目指して、1)浅海域におけるAUVの水中航行制御技術の確立、2)浅海域におけるAUVの機体形状の設計手法の確立を目的とする。ここで、浅海域における外乱(波、潮流)に対して、姿勢制御能力が高いと思われる胸鰭運動装置を装着したAUVを考える。 平成13年度は、浅海波に見られる上下方向よりも大きい前後方向の波粒子運動に対して、ホバリングするために、前後方向、左右方向、上下方向に最大の推力を出すための胸鰭運動装置の鰭運動の最適化を行った。魚の胸鰭の運動学的研究から、胸鰭の動きは、種類によって、また遊泳速度によって変わることが明らかになっている。おおまかには、胸鰭の動きは、高速域における上下運動を中心とした揚力型と、低速域における前後運動を中心とした抗力型に分かれる。これらの型について、非線形最適化手法を用いて、水流中と静水中における胸ひれ運動の最適化を行った。その結果、(1)については、水流中では、揚力型が抗力型より大きな推力を出し、また推進効率も大きいがわかり、一方、静止中では、抗力型が揚力型より少ない消費パワーで大きな推力を出すことがわかった。平成14年度は、胸ひれ運動の最適化に関する昨年度の研究結果をふまえ、前後に二対・計4個の3軸胸鰭運動装置を搭載した水中ロボットを用いて、遊泳性能及び運動制御性能試験を行い、外乱(波、潮流)中において、制御技術を開発した。遊泳性能試験の中で、直進(前進)については、鰭の周波数を変えることにより速度は可変で、揚力型の鰭周波数3Hz時に、最高速度が0.578m/sであった。最高速度では揚力型が勝るが、出足の速さは、抗力型の方が速い。このことは、抗力型の方が、応答性が良いことを意味している。その他、揚力型と抗力型を用いて、前進速度付潜航・浮上、その場旋回、横移動、円運動ができることを明らかにした。 制御性能試験では、PTP制御(Point To Point)を行い、鉛直面内と水平面内において同時に制御が可能であることを明らかにした。波浪中において、水面付近に水中ロボットを配置して、ロール制御を行なった。波との同調周期において、ひれ運動周波数3Hzにおいて、約2/3のロール運動の減少が得られた。外乱中でも、素早い応答を示し、姿勢制御が十分に作動することを明らかにした。
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