遠浅な海岸が少なく、気象、海象が厳しくその変動性も高いわが国で、海上に風力発電施設を建設する場合、安全で、疲労耐久性、経済性のある基礎構造物の開発が必要である。そのため、1)わが国の洋上発電施設に相応しい基礎構造体を提案し、2)変動風と波浪荷重を同時に受ける風車(ローターとナセル)・タワー・基礎相互の構造振動特性を明らかにし、3)疲労に対する耐久性評価技術を確立することを目的に、研究を実施してきた。 平成13年度には、以下の研究を実施した。 1)プロペラ式水平軸と垂直式風車の調査 2)杭式、ジャケット式やケーソン基礎などの固定式基礎、および軟着底など浮体式基礎の適用性の検討 3)大型化により海上で有望となると考えられている水平軸風車を対象に、風車部とタワーが受ける変動風力荷重や基礎構造に作用する波浪荷重の時刻歴荷重作成ルーチン、および、これら荷重を受ける風車・タワー・基礎構造一体の振動解析プログラムをモーダル法をベースに作成し、各種基礎の相違による振動特性を明らかにした。 4)応力範囲の計数法の調査 平成14年度は、この振動解析プログラムにより得られる部材に発生する応力の応答波形から、 1)応力範囲とその回数を計数するプログラムを開発し、 2)特定の海域における風と波浪の年間の出現頻度分布例を用いて、年間、あるいは供用期間での応力範囲とその回数の作成のための適用を行い、 3)これらの結果を確率分布関数に近似しマイナー則による疲労評価の検討を実施した。 具体的には、1)の計数法に関しては、13年度の各種計数法の調査を踏まえ、実用性の高く固定式海洋構造物で用いるゼロアップクロス法、および低周波波形に畳重する高周波成分なども計数できるrain-flow法やrange-pair法などの計数解析プログラムを作成である。2)については実プロジェクトが計画されているある海域の設計条件をもとに、500kW級の施設の構造諸元を設計し、変動風と波浪荷重に対する振動応答解析を行い、得られた応力履歴からある供用期間における応力範囲とその回数を推定した。ついで、3)においては応力範囲とその回数に関する頻度分布に着目し、疲労評価に便利なように、Weibul分布なる確率分布関数への適合性を調べ、マイナー則による疲労評価を実施した。 これらの成果は雑誌や論文、講演会などで公開した。
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