本研究では、豪州Dartbrook炭鉱で採取した夾炭層岩石の室内基礎実験と、同炭鉱で観測したAEデータの解析を行い、採炭に伴う岩盤内3次元フラクタルき裂分布モデルの構築、更には現場観測事象との対比によるモデルの妥当性の検証を目指した。 同炭鉱の天盤を構成する石炭・砂岩・シルト岩を採取し、合計17個の供試体を作製し、単軸および3軸圧縮試験を行った。その結果、 1)どの岩種においても、封圧が増すと最大強度点に至るまでのAE発生頻度は減少する傾向が認められた。 2)最大強度点に至るまでのAE活動およびAE震源分布には、岩種による違いが見られた。 3)3軸圧縮試験中に得られたAE波形は、センサーの特性試験を行った結果、加速度を更に時間微分した波形であることが判明した。 4)モーメント・テンソル解析を実施し、16供試体(1個はAE事象数が少ないため除外)について3Dフラクタルき裂分布モデルを作成した。 5)3Dき裂分布モデルの表示にはVRMLを用い、3次元空間内で自在に視点を変えて観察できるようになった。 6)モーメント・テンソル解析の結果、石炭、砂岩共に封圧の増加に関わらずせん断型のき裂が引張型よりも多いことがわかった。 採炭に伴うAE波形の解析においては、同炭鉱の採俵パネルNo.4において1999年8月から10月に観測された約20万波形を対象にした。その結果、 1)採炭に伴うAEデータの解析については、20個の3成分速度計の各3軸方向の決定を発破データにより試みたが、一貫性が見られずセンサ設置に問題のあることが判明した。 2)そこで、従来のAE波の到達時間差だけを用いた震源標定を実施し、可能な事象についてのみ3Dき裂分布モデルを作成した。 3)採炭に伴い発生するAEの活動は、採炭切羽近傍で観察された小崩落等の事象と対応していることが明らかになった。
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