マグマだまりが十分に広く、熱抽出部の周りに十分なマグマの対流が発生して凝固域の外周から一定の熱供給が期待できる場合について検討を行った。解析の基準状態として、次の状態を設定した。すなわち、線膨張係数と縦弾性係数の積:4.5×10^5(Pa/℃)、凝固域の半径:2m、凝固域の外周温度:800℃、坑井半径:0.1m、深度:7km、先在き裂長さ:2.5mmである。応力場は、坑井内壁と凝固域外周の温度差(内外温度差)による熱応力、外周に作用する岩体の自重によるかぶり圧、並びに、内壁に作用する水圧による応力場の3つを重ね合わせたものとなる。この応力場内におけるき裂群の形成プロセスの解明を破壊力学により行った。その結果、基準状態においては、内外温度差が約463℃で最初のき裂進展が起こり、以後坑井壁の冷却に伴い次々と成長するき裂数が増加して、破砕帯が形成される。内外温度差に対するき裂枚数の増加速度は極めて大きく、例えば、基準状態においては、最初のき裂成長が起こる内外温度差と8枚目のき裂成長のそれとの差は、わずか6℃にすぎない。このことは、破砕帯が一挙に形成され、成長を制御することが極めて難しいことを意味している。破砕帯の形成に影響を及ぼす種々の因子の影響を検討した結果、熱抽出システム設置深度が最も強い影響を及ぼすことがわかった。また、坑井半径と坑口圧の影響について調べた。坑井半径を0.05m〜0.3mと変化させても、き裂成長が起こる坑井内温度は、ほとんど変化しない。破砕帯を構成するき裂群の長さは、坑井半径が大きくなるにつれて長くなる。一方、坑口圧の影響については、次のようであることが判明した。すなわち、坑口を加圧しても、き裂群の長さはほとんど変化しない。また、最初にき裂成長が起こる坑井内温度は、坑口圧に敏感に反応することが明らかになった。
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